うろんな客
風の強いとある冬の晩、館に妙な奴が闖入(ちんにゅう)してきた。そいつは声をかけても応答せず、壁に向かって鼻を押しあて、ただ黙って立つばかり。翌朝からは、大喰らいで皿まで食べる、蓄音機の喇叭(らっぱ)をはずす、眠りながら夜中に徘徊、本を破る、家中のタオルを隠すなどの、奇行の数々。でもどういうわけか、一家はその客を追い出すふうでもない。 アメリカ生まれの異色のアーティスト、エドワード・ゴーリーによる、1957年初版の人気の絵物語。なんといっても、「うろんな客」の姿形がチャーミングで、忘れがたい。とがった顔に短足。お腹がふくらみ、重心が下にある幼児型が、稚拙な仕草をほうふつさせる。 この客、傍若無人ながらも憎めないのは、多分、彼が無心に行動するからだろう。たとえば子どもにせよ、ペットにせよ、無垢で無心な存在に、手はかかるけれども案外私たちは救われているのでは。そう思うと、この超然とした招かれざる客には思いあたるふしがある、と深いところで納得させられもするだろう。 白黒の、タッチの強いペン画と、文語調の短歌形式の訳が、古色蒼然としたヴィクトリア風館の雰囲気を、うまく醸し出している。明治時代の翻訳本のようなレトロ感も魅力。原文はゴーリー得意の、脚韻を踏んだ対句形式。どのページの絵も、これまた芝居の名場面のようにピタリときまって、子ども大人共に楽しめる絵本だ。(中村えつこ)
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心と生活に入り込む「IT(何か)」が怖い |
原文タイトルは「The Doubtful Guest」ですが、本文中は「Guest」という単語はなく、すべて「IT」で表されます。「IT」と見るとスティーブン・キングの名作「IT」が思い出されます。様々なものを含包する「IT」が、ここでも怖さを発揮しています。
本著で「IT」を迎えた一家は、追い出すでもなく、粗雑に扱うでもなく「IT」と共生を始めます。「IT」は時に自分勝手ぶりを発揮しつつ住みつき、気が付いたら・・・というストーリーです。
ふと人間の心にぽっかりと空いたところに入り込み、時に宿主を振り回す「IT(何か)」を描いているのではないでしょうか。誰にでも覚えがありそうな感覚な気がします。キリスト教の「七つの大罪(傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・暴食・色欲)」のような。作品中でもそうですが、「IT」はどこか愛嬌があり、宿主は「IT」の存在を受け入れてしまうのかもしれません。
ゴーリー作品の中では珍しく、直接的に「死」を感じさせる内容ではありませんが、そこはかとなく感じる怖さは他の作品に引けを取りません。
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読めば読むほど |
エドワード・ゴーリーさんの著書を拝読したのは本書が初めてです。初心者でも読みやすく、ファンの間で評価も高いとの事でしたので安心して読み始めました。何だか読めば読む程に、謎の生物うろんな客に愛着を感じました。最初の読後は意味がよくわからず、訳者の柴田さんの追悼文を読んで初めて理解しました。うろんな客の意味を理解した上でまた読み返してみると何故だか面白い。思えば皆、うろんな客の人生を皆歩んできたのだなぁと思うと人は何故あたかも当然のように受け入れられるのだろうと考えてしまいました。物の見方の違い、視点の違いとは面白いですね。まだエドワード・ゴーリーさんの著書を真に理解する言は出来ませんが新鮮な本でした。
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すごい |
脳味噌のどの辺りを活用すればこういった発想が
できるのかさっぱり判らない。こっちの想像の三歩
くらい向こうにスポットライトが光を落としている
感じがする。イメージや論理の飛躍が刺激的で新鮮で
何度読み返しても飽きない。そして最高に笑える!!
ゴーリー絵本の中でも一番好きです。
柴田元幸氏の訳も、センス良く、品良く、素晴らしい。
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ゴーリー。 |
この人の作品は、見れば見るほどわくわくするというか、何とも言えない気持ちになります。無性に何かやりたくなります。この本は素直に面白く、ゴーリーの表現力の旨さと画力の高さを思い知らされました。読むたびに違う本を読んでいるかのような、新しい発見が次々と出てきます。観察すればするほどおもしろい。個人的に生物が壁に鼻を押し付けているページがとても好きです。あと、最後のページにあの生物がちゃっかりいて、住人たちがもうどうでもいいやみたいな顔をしているところがおもしろかったです。
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子育て中の人に読んで頂きたい!! |
数あるゴーリーの作品の中で一番楽しく、微笑ましく感じられ、
多くのファンに愛されている本だと思います。
私も大好きな本です!
楽しく、微笑ましく…とは言っても、そこはゴーリーですから
もちろんその中身はシュール。
「うろんな客」とは何者か・・そこに軽妙な風刺も感じられます。
子育て中の人なら、このような不可思議な行動に思い当たる節は多い筈。
思わずそうそうと頷き、ゴーリーの子供というものへの直感的観念が
いかに核心をついた鋭いものかが理解できるような気がします。
是非、子育て中の人に読んで頂きたいと思う本です。
子供の、大人にとっては迷惑だと感じる行動にも、
この本を読めば少しはおおらかな気持ちで
接することができるようになるのではないでしょうか。
柴田元幸さんの訳にはいつも素晴らしいと感心しますが、
この本では「短歌形式」という意表をついた訳となっています。
これがなんともリズム感や味わいのある文になっていて、
本当に素晴らしいと思います。
文字数の制限がある中で、これだけの表現ができるなんて
「日本語って凄い!!」とあらためて思いました。
完全訳とはもちろんいきませんが、原文(英文)も合わせて載せてありますし、
訳者あとがきの中にはご丁寧にも散文バージョンの訳も書かれていますので、
いろいろな形で存分に味わえる内容になっていると思います。


